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研究室選択のすすめ

卒業研究における研究室選択の一考察

3年生にとって卒業研究の配属先を決めることは非常に大変なことだと思います。しかし,一生のうちでもかなり重要な選択になるので,よく考えて決断をしないと取り返しのつかないことになってしまいます。

 

(1)卒研だけで社会に出て大丈夫ですか?  答えは,大丈夫ではありません

よく考えてみましょう。今のような不景気な世の中では,就職活動に大変時間がかります。下手をすると,3年生の1月ごろから,4年の夏までかかることもあります。そうすると,卒業研究は秋からたった数ヶ月しかできないではありませんか。これでは,卒業研究をやったとは誰も思ってくれません。たとえ,運良く就職が決まっても,入社後の仕事で役立つとは決して思えません。せっかく理学部を卒業して,社会にでるのなら,たとえ教員や公務員(事務系を除く)志望であったとしても,修士に進学し,あと少し研究というものの本質を味わってからでも遅くはありません。そうすることで,きっと学部卒より充実した将来をおくれることでしょう。

 

(2)どんな研究室を選んだらいいか? 答えは,厳しい研究室を選びましょう

一見,教員や先輩がやさしく,楽しそうな研究室を選んだらよいと思われますが,これには落とし穴があります。研究活動はそもそも孤独な作業です。優しかったり,楽しそうだったりするのは,研究とは別の部分の話しです。普通,研究室の生活で教員や先輩が優しかったり,楽しかったりしても,いざ研究になれば厳しく,辛いに決まっています。この厳しく辛い部分がない研究室では,決して力は付きません。研究では厳しいが,研究室の普段の生活ではストレスを感じない研究室を選ぶことが重要です。後者の部分では,教員の性格をよくみることも大切です。しかし,研究では厳しくなければいけません。

 

(3)どうやって選んだらよいのでしょうか?  答えは,データを見ましょう

ポイントは3つです。まず,研究室の業績をみましょう。自ずとしれたことですが,大学教員の仕事は,教育と研究です。はっきり言って,研究室できちんと教育と研究を行っていないと業績(原著論文発表,学会発表)は出ません。化学を生業としている普通の大学教員であれば,年に最低1報,普通2〜3報の原著論文を発表しています。時には大ネタを狙って,論文が数年でないこともあり得ますが,4〜5年も論文が出ないと言うのは少し???でしょう。あと,文科省の基準とは別に,15報くらいで助教,年齢と論文が同じくらいになると准教授,年齢の倍で教授になれるとよく言われるています。さて,この辺はどうでしょうか?

次のポイントはお金です。大学法人化以降,年々運営費交付金は削減され,校費だけでは卒業研究を全くやれません。一人当たりいくらかはあまりにひどいので書けません。興味のある人は,個人的に聞きにきてください。現状では,卒業研究や修士論文研究をきちんとおこなうためには,教員が自ら外部資金を獲得する必要があります。だから,各研究室の外部資金のデータや研究室自前の装置を見れば,その研究室できちんとした研究ができるかどうかが一目瞭然です。

最後のポイントは,研究室の活動状況です。学生や教員がどれだけ一生懸命やっているかを見てみましょう。ちゃんとした研究室は,四六時中,研究室には誰かがいて,頑張って研究をやっています。あと,どれくらい教員とコンタクトが取りやすいかも重要です。研究以外の活動も研究室のアクティビティを測るのによいかもしれません。でも,遊びだけではいけません。よく学び,よく遊ぶ研究室が一番です。

 

(4)なぜ,辛く厳しい研究室で過ごすべきか?  答えは,自分の将来のためです

大学3年生のこの時期,是非,自分の将来をよく考えてみましょう。大震災があったり不景気が続いたり,とかく将来が不透明です。そんなときだからこそ,頼れるものは自分の力だけです。厳しい環境に身を置いて,自分を磨くしかないのではないでしょうか。例えば就職活動を考えてみましょう。もし,あなたが採用担当もしくは社長さんだったら,どんな学生を取りますか。自分を採用しますか?この質問に,「ハイ」と胸を張って答えるために, 辛く厳しい研究室で頑張って欲しいと思います。

 

(最後に一言)必ずしも研究室でサイエンスをやるだけがすべてではありません。今,自分が一番大切だと思うことを選択することもお忘れなく。

 

(2011.10.17 記)

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